
このように困った事態に陥ってしまうことは、現在の日本では決して珍しいことではありません。
このままでは生活を維持していくことが出来なくなるということで、債務整理の制度を知り、勧められるがままにその制度を利用七得る方もいます。
しかし、その後自身の情報が「ブラックリスト」というものに掲載され、クレジットカードや新規のキャッシング審査に通らなくなっているという事実に愕然としてしまうことも度々ネット上などの相談等で聞かれる話です。
ブラックリストに掲載されてしまう期間に決まりはあるのでしょうか。
期間があるのであればそれはどの程度の期間なのでしょうか。
この記事ではこの疑問点を解決したいと思います。
目次
債務整理とは何か
一言に債務整理と言っても、実は様々な制度が存在しているのをご存知でしょうか。
それらの総称として「債務整理」という言葉が一般的には使用されています。
まずは債務整理と呼ばれる制度に共通している事柄をご紹介します。
つまり、月々の返済が難しくなってしまった借金問題の解決を国の取り決めた法的な手続きに従って処理をすることによって、新しい生活に向けて再スタートを切りやすくなるように作られた救済制度になります。
実は日本では既に1年間に約10万人程度がこの債務整理制度を利用していると言われています。
皆さんが考えている以上に身近な制度と言っても差し支えありません。
キャッシングやクレジットカードのリボルビング払い等の返済問題はこの制度を利用しての解決が一番望ましいと言えます。
なぜなら、法律上この制度で解決できない借金問題は日本の中には存在していないからです。
しかし、債務整理を利用して借金を整理をするか、利用せずにこのまま月々の返済を続けるかは、他の誰かが決めてくれるわけではなく、自分自身で決めなくてはいけません。
但し、現時点で既に以下の状態に陥っている場合は早急に債務整理の利用を検討を始めた方が良い状態だと考えられます。
- 借金の月々の返済を延滞している。(月々の返済期日に遅れている)
- 借金の返済を滞納している。(月々の返済期日に返済ができず、翌月の返済期日を迎えてしまっている)
- 借金を返済するために別の会社から借金をしている。(多重債務状態)
特に現在3点目の状態に陥ってしまっている場合はすぐにでも検討が必要です。
正直なところ、このまま返済を続けていても、今後に幸せな人生が待っているとは考えにくい状況です。
さて、債務整理の制度には4種類の方法が存在しています。次はその4種類の方法をそれぞれ紹介しながら、各制度のメリットとデメリットを検証していきましょう。
4種類の債務整理
債務整理には以下の4種類の制度が存在しています。
- 自己破産
- 任意整理
- 特定調停
- 自己再生
どの制度を利用しても一定のメリット・デメリットが存在しています。
一番大きなデメリットとしては、ブラックリストへの登録が行われてしまいます。
1.自己破産
最近、ドラマやメディアの中でも取り上げられることの多い一番有名な方法、かつよく耳にするのはこの「自己破産」ではないでしょうか。
これだけを取り上げると非常に良い方法に聞こえるのですが、もちろんそんな美味しい話ではありません。借金をすべて帳消しにする代わりに「財産もすべて処分」する必要があります。
また、このメリットの部分だけを強調して自己破産を迫ってくる専門家は非常に危ういと考えられますので注意するようにしてください。
厳密に述べるのであれば、「自己破産は所持している財産をすべて処分し借金の返済に充てて、残った借金の額を帳消しにする」という制度です。そして、自己破産の申請は審査もその手順も全てが非常に厳格に取り決められています。
なぜなら、この自己破産は債務整理の中でも最終手段ともいえる程の強力な処理で、借金をした債務者だけでなく、お金を貸し出した債権者(銀行などの金融業者)、双方が大きなダメージを受けてしまうからです。
その為、債務の免責(借金の帳消し)を決定するのは唯一中立の立場を取ることが出来る裁判所(国)となります。
それはつまり、国家権力に相当する強い権力によって貸し出した金銭の取り立てを今後継続して実施することを禁止するという措置になるわけです。
よって、自己破産をしなければ今後の生活がどうしようもないという状況にまで陥っていることが自己破産における必須の申請条件となります。
つまり申請時の時点で「支払い不能状態に陥っている。自己破産以外に解決の余地なし」という第三者認定を裁判所から得る必要があります。
債務整理を検討していて、以下のような状況に2点以上当てはまっている方は、裁判所から支払い不能状態に陥っていると判断される可能性があります。
早急に専門家に相談する等の検討が必要であると考えられます。
- 現在、支払いが延滞しているが、不動産などの価値の大きな財産を所有していない方
- 失職や病気などで収入が絶えてしまっていて、今後の返済見込みが立たない方
- 借金を返済するために別の会社から借金していて、その返済見通しが立たない状況になっている方
- 消費者金融や銀行カードローン審査に通らず、借りることができなくなった方
- 闇金を利用している、または利用しそうになっている方
1人で悩むのではなく、知恵を借りることが大切です。
2.任意整理
こちらもよく耳にする「任意整理」という制度ですが、これはどのような制度なのでしょうか。
つまり、当事者同士の了解の下で金利の変更や固定、返済金額の減額などを任意の業者と行うことが出来るという制度です。
債務整理の4種類の方法の中では比較的制限となる事柄少なく、心理的なハードルも低いこともあって多くの債務者が利用検討する手続きとなります。
自己破産等の大きな手続きをせず、貸金業者(債権者)と直接交渉することで利息や月々の返済金を減額してもらう方法です。
極端な話をすれば、任意整理は弁護士や司法書士などの法律専門家に依頼する必要も無く、債務者本人が貸金業者と交渉を行うことも可能です。但し、その場合に必要となる資料作成や書類の準備などは全て自分で行わなくてはなりません。そのことを肝に銘じておく必要があります。
これらの事情から、債務者だけで貸金業者である金融機関と交渉することは現実的に考えてとても難しい場合が多いので、弁護士や司法書士といった専門家に依頼して交渉にあたるのが一般的になります。
また、交渉の中で完済までの期間を3~5年間に設定したり、一括返済にしたりすることが借金減額の条件となることが多くあります。
以下のような状況に2点以上当てはまっている方は、任意整理を検討された方が良い可能性があります。
法律専門家に相談するなどの検討が必要であると考えられます。
- 借金はきちんと最後まで済したいと考えている方
- 同一の貸金業者と3年間以上の長期間取引を行っている方
- 一部の貸金業者との債務だけを条件変更したい方
- 住宅ローンを優先して返済しながら他の債務は整理したい方
- 借金問題に関して裁判所を通した処理を行いたくない方
3.特定調停
3つ目の制度は耳慣れない「特定調停」です。
この制度はどのような制度なのでしょうか。
特定調印は元々は裁判所の職員であったOBなどが多く、法律の専門家と同じ役割を果たしています。
そのような専門家が仲介を行ってくれ、債権者(貸金業者)との交渉もスムーズに行うことが可能となっています。
特定調停は上記のように専門家のサポートがつく手続きです。
債務整理を現時点で検討しており、かつ以下のような状況や考えにどれか当てはまっている方は、特定調停を検討された方が良い状況だといえます。
一度裁判所に足を運んで「特定調停を考えている」ということを伝えて、話を聞いてみることが良いかもしれません。
- 任意整理について専門家へ支払う費用はなるべく低く抑えて節約したい方
- 弁護士や司法書士に債務整理の契約を断られてしまった方
- 平日日中(17時ごろまで)に裁判所に行くことが可能な方
但し、支払いについて、3~5年間の和解計画での決定内容通りに行わないと、借金は免除や減額になりません。
4.個人再生
「個人再生」は、企業などが「民事再生」とニュース等で報道されている制度と同じ処理になります。
その為「個人民事再生」と表現されることもあります。
借金を最大5分の1程度にまで免除してもらい、それを原則的に3年間で返済する計画を立てて完済を目指します。
債務整理を検討していて、以下のような考えや状況にどれか当てはまっている方は、個人再生を検討された方が良い状況だといえます。
- 自己破産の申請で免責決定が出なかった方
- 借金はあるものの今後も定期的な収入がある方
- 任意整理では返済が難しいものの、自己破産までは必要のない方
- 車を所有していて、ローン等がない車を所有している方 ※ただし、完済していれば所有を継続できます。
そもそもブラックリストとは何か
単にブラックリストと言っても、実はブラックリストと呼ばれる帳簿が存在しているわけではありません。
ブラックリストに登録されるとは「信用情報機関に異動情報が掲載されること」を指します。
この異動情報というのは返済の延滞や破産などで貸金業者にダメージを与えることで登録されます。
所謂「金融事故」を起こしてしまった為に今後、他の金融機関に危険な顧客として周知されてしまうというものです。
つまり、ブラックリストに登録された顧客は「新規で貸し出すと貸し倒れになる可能性がある要注意な顧客」という位置付けとなります。
また、債務整理を実施した場合も金融機関は何かしらの不利益を被る形になりますので、信用情報機関には登録されることになります。
そのおおよその登録期間は債務整理の種類によって異なっていますので以下にまとめていきます。
4つの債務整理の特徴とブラックリスト登録期間
自己破産、任意整理、特定調停、個人再生と4つの方法を紹介しましたが、それぞれのここまでの特徴とブラックリスト登録期間を表にして見やすくします。
処理方法 | 処理に裁判所の必要性 | 専門家の必要性 | 返済までの期間 |
信用情報への登録期間 (ブラックリスト) |
自己破産 | 必ず必要です。 | 弁護士・司法書士 | 免責 | 最大10年間掲載 |
任意整理 | 必要ありません。 | 必ず必要ではありません。 | 3~5年間・一括返済 | 5年間掲載 |
特定調停 | 必ず必要です。 | 裁判所所属の調停委員 | 3~5年間 | 5年間掲載 |
個人再生 | 必ず必要です。 | 必ず必要ではありません。 |
3年間 (最大7年まで延長可) |
最大10年間掲載(7年程度) |
ブラックリストを掲載する機関は3機関
現在、個人信用情報機関は3機関存在しています。
銀行や信販会社などはそれぞれに信用情報機関を利用していて、顧客の信用情報を管理し、他社と共有できる仕組みとして利用しています。
具体的には以下の3機関となります。
- CIC(クレジット情報センター)
- JICC(日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用センター)
各機関にはそれぞれ特徴があり、登録される情報の質やその基準が異なります。
その特徴を確認していきましょう。
CIC(クレジット情報センター)とは?
まず初めにCICです。
CICは全国のクレジットカード会社や消費者金融の共同出資によって建てられた信用情報機関で、クレジット会社や信販会社の多くが加盟しています。
殆どすべてのクレジット会社や消費者金融会社が加盟しているので、一度登録されてしまうと、大きなダメージを受けることとなります。
影響力が非常に大きい機関です。
現在の登録会社数は約930社あり、7億件を超えるクレジット利用履歴やローン案件が記録されています。
そして利用者からは1万9000件もの信用情報開示がたった1ヶ月で行われていることからもその規模の大きさが窺い知ることができます。
実は、携帯電話やスマホの本体代金の割賦割の情報を所持しているのはCICなのです。利用履歴の件数が大きく膨らんでいる原因の一つでしょう。
CICに一度記録されると、そのデータは最大5年間は記録として残り、閲覧することが可能となります。
- クレジット会社と消費者金融が中心に設立
携帯電話の割賦支払い情報を所持している
ブラックリストとなると最大で5年間登録される
JICC(日本信用情報機構)とは
JICCは1986年に設立され、平成18年に貸金業法によって国から設定された指定信用情報機関です。
指定信用情報機関という名の通り、消費者金融、信販会社、クレジットカード会社、リース会社など、多種多様の会社の加盟があります。
総加盟会社数は1300社以上、うち消費者金融数は890社以上にも上っています。
加盟会社数は3信用情報機関の中で一番多く、個人の情報開示をするには一番ヒットしやすい情報機関です。
但し、銀行の登録数は少ない印象です。しかし、クレジットカード審査等では利用率が非常に高い機関です。
JICCもCICと同様に一度記録されると、最大5年間は記録として残り、他社からでも閲覧可能となります。
- 消費者金融の加盟社数が一番多い
- 他にもリース会社や信販会社など、多彩な会社の加盟がある
KSC(全国銀行個人信用センター)とは
最後の1つであるKSCは名前の通り、全国の大手銀行や地方銀行を始めとする殆どの銀行が加盟している信用情報機関です。
一般的に銀行のキャッシングやカードローン等の審査は非常に難しく、かつ厳格です。
そして、このKSCが提供する信用情報こそ、銀行でのカードローン発行などにおける一番の信用情報となるのです。
学生の奨学金機構などもJBAに加盟している場合が多いのです。他にも農協や信用金庫なども加盟していることがあります。
そして信用で商売をしている銀行系の信用情報機関であるからこそ、利用者の記録が登録される期間が一番長く、最大で10年間記録されます。
債務整理を行うと、銀行からの金額の大きなローンなどが組めなくなるので気をつけましょう。
- 利用者記録の保管期間が一番長い
- 銀行を中心に加盟する企業が多い
- 奨学金などの、日本学生支援機構も加盟している
ブラックリスト掲載はいつまでか
債務整理を実行すると、その会社の所属している信用情報機関に必ず登録されてしまいます。
債務者側の都合で借金の減額や免責を行うわけなので、相応のペナルティを受けることになるのです。
一度登録されると消去することは非常に困難で、掲載期間が過ぎるのを待つしかありません。
事故情報が掲載されている期間は新規のローンやキャッシングで銀行の審査を通過することができなくなるでしょう。
また、それだけでなく各種クレジットカードを新規で作成することができなくなったり、更新時にはゴールドカードを維持できなくなったりします。
借入金の減額に対してメリットが大きな債務整理ですが、デメリットは債務整理後の生活に大きな影響を与えてしまうことなので、必ず確認してから手続きを進めるようにしてください。
ブラックリストの登録期間
以下の表に債務整理だけでなく、主だった掲載理由とその掲載期間(最長期間)をまとめましたので参考にしてください。
ブラックリスト掲載条件/信用情報機関 | CIC | JICC | KSC |
61日以の上返済延滞 | 5年間 | 1年間 | 5年間 |
90日以上の延滞の継続 | 5年間 | 5年間 | 5年間 |
クレジットカードの強制解約 | 表記なし | 5年間 | 5年間 |
自己破産 | 7年間 | 5年間 | 10年間 |
任意整理 | 掲載なし※ | 5年間 | 5年間◆ |
特定調停 | 掲載なし※ | 5年間 | 5年間 |
個人再生 | 掲載なし※ | 5年間 | 5年間 |
代位弁済 | ※ | 5年間 | 5年間 |
※CICのホームページ「よくあるご質問」ページによると、「登録されない」と返答が掲載されているものの、保証会社の代位弁済が発生した場合は「返済状況」欄に「異動」が掲載されるとあります。この登録期間は契約終了から5年間です。
◆KSCに任意整理を区別する欄はありませんが、保証会社の代位弁済が発生した場合は代位弁済にて登録され、最長5年間となります。
自己破産についてはかなり厳しく掲載期間が定められており、クレジットカード会社や消費者金融、そして銀行は自己破産に対して厳しく接していることが考えられます。
特にKSCでの自己破産の登録機関は最長で10年間とかなり長期間に及びます。しかし、銀行系の信用情報としては当然の対応と言えそうです。
個人信用情報機関は相互の情報共有の仕組みとして「CRIN」と「FINE」というシステムを使用しているようです。
この仕組みのお陰もあって、信用情報機関が所持している金融事故情報は全クレジットカード会社が照会できるようになっています。
その為、一度ブラックリスト(信用情報機関)に掲載されてしまうと、スコアリング評価形式で評価をしている一般的なクレジットカード会社の審査に通過することは無いとみて良いのです。
申し込む場合は、現在の収支を重視してくれ審査に通りやすいクレジットカード会社を選択する必要があります。
まとめ「まずは信用情報を確認してましょう」
信用情報機関に登録される期間はあくまで「最長」です。
手数料は必要となりますが、個人信用情報機関ホームページから個人信用情報の開示請求が出来ます。
債務整理後にご自身の信用情報の状況が知りたい場合は、一度直接確認してみることが良いのではないでしょうか。