2019年10月12日、台風19号が関東を襲ってから早くも1ヵ月が過ぎた。
台風19号による被害は大きく、全国で88人の死亡者と7人行方不明者となっている(※2019年11月12日現在)。
これから寒さが本番となるが、被害の大きかった地域はどう対策するのか。
今週のガイアの夜明けでは、命を救う現場に密着取材。
現場で奮闘する人々の姿に迫る!
自衛隊も手が届かない被災地で大活躍!執念の技術者が生んだボート。
10月6日、マリアナ諸島の東海付近で発生した台風19号は、過去最大級の勢力で東日本に上陸し、関東地方を中心に日本全国に大きな被害をもたらした。
長野県にある千曲川は約70mにわたり堤防が決壊。
ガイアのカメラが見た現場は、想像をはるかに超えるものだった。
千曲川周辺の地域では、多くの家が床上まで浸水していた。
決壊した翌日の10月14日、長野市内で自衛隊員らが被災地の救助をしている中、町中では巨大なプロペラを付けた不思議な形のボートが動いていた。
これは東日本大震災を経験した宮崎県出身の佐々木甲(こう)さんが作った「救済用エアボート」だった。
佐々木さんは山梨県から11時間かけて現場に到着。
佐々木さんは東日本大震災で発生した津波により、友人を失ったひとりだ。
当時の「エアボートなら行けたのに。あの人のもとに行けたのに。」という後悔が原動力となり、佐々木さんは60歳から2年がかりで「済用エアボート」を完成させた。
エアボートが救済に向いている理由やお値段は?
エアボードはプロペラの風力で進みボートだ。
通常、船には「スクリュー」と呼ばれるプロペラを設置するものがほとんど。
そこに、通常の船とエアボートの違いがある。
エアボートが救済活動に適している理由は、船にスクリュー(プロペラ)がないため水深を必要とせず、浅瀬でも走行することができるからだ。
今回の台風19号で佐々木さんはエアボートを自ら操縦し、大規模な浸水被害があった長野市の救助活動を行っていた。
佐々木さんのエアボートが走行していたのは、自衛隊では手が回らないエリア。
佐々木さんが手掛ける救済用エアボートは一1艇1200万円~。
値段は高く感じるかもしれないが、これで災害によって逃げ遅れる人々を救済できるのかと思うと高くない。
需要の高まる「救済用エアボート」とは?
このエアボートは佐々木さんが独自で開発を行い、製造している。
佐々木さんはエアボートの開発のため、エアボート製造会社「fa-arrow-circle-rightフレッシュエアー」を立ち上げた。
昨今、台風や地震などによる水害が増え、佐々木さんは「水害があるごとに、名前が知れてエアボートの問い合わせが多くなった。地方の自治体に広がれば救助活動が敏速化するのでは。」と話す。
佐々木さんの手掛ける救済用エアボートはすでに高知県警など納入されている。
また、2015年に起こった鬼怒川氾濫では、消防の申請で46人を救助した。
最近では、国内の消防機関から大型エアボート2艇を受注した。
断水地域で活躍する再利用水でシャワーができる「WOTA BOX(ウォータボックス)」
台風や地震などの被害により、断水が起こると飲み水の確保だけではなく、シャワーすら浴びることが難しくなる。
その不便さに目をつけ、解決する商品を考案したのが、ベンチャー企業「fa-arrow-circle-rightWOTA(ウォータ)」だ。
WOTAは東京豊島区にあり、2018年9月にガイアの夜明けが東大発ベンチャー企業として紹介した企業だ。
WOTA BOXはなんと95%以上の水を再利用することができ、100ℓで100回以上のシャワーができる。
実は、このWOTA BOX は2018年に起こった西日本豪雨の被災地でも活躍。
WOTA BOX の価格は1セット500万円(税別)で、これまで約40台の販売実績がある。
朝から晩まで利用者が絶たない「WOTA BOX(ウォータボックス)」
今回の台風でも、WOTA BOXは朝から晩まで多くの被災者に利用されていた。
WOTA BOXはキャスターが付いているので、移動も1人で持ち運びが簡単に出来る。
千葉県富津市から断水の連絡があり、山間部で停電しているエリアにボランティアでWOTA BOXを設置することになった。
そして、現地に到着してからわずか30分で2台のシャワーの設置が完了した。
東京に残り、現地の様子をネットを通じて確認していた前田さんは、「(WOTA BOXを)作って良かった。災害という場面(での支援)を追いかけてきて、形になりつつあるので加速していきたい。」と話す。
10月16日、次は長野市からWOTAにシャワーの要請が入る。
千曲川が氾濫したエリア付近では下水処理場が被災したため排水ができず、「下水処理なし」で使えるシャワーということでWOTAに声が掛かったのだ。
市からの要請により、WOTA BOXの台数が足りない!
WOTAの開発した水道不要の循環型シャワーは被災地で大活躍し、長野市内には2か所に設置。
シャワーを運営するため、長野の現地に泊まりこみで対応にあたる。
ここで、前田さんたちはある問題に直面する。
現場の人員配置の理想は、利用者の応対とトラブル対応のため、現場のスタッフは2名。
しかし、そうすると常時2名足りなくなってしまうのだ。
そんな時、前田さんに長野市から連絡が来て、「他の避難所にも2台ずつ置いて欲しい」というのだ。
必要な台数は少なくとも12台となり、お客から借りるなどして台数を確保。
長野市内の6つの避難所に設置したが、他の自治体には対応することができなかった。
自分たちだけの力では運営が難しいと思い、WOTA BOXの導入を検討している「協定内容」を結託した。
内容は【シャワーを配備した自治体が災害時に装置と人員を融通しあう】というもの。
これでWOTAは人手不足を解消することができた。
損害車買い取り専門業者「TAU(タウ)」
今回の台風による被災地でよく目にしたのは、水没した車。
その数はなんと推測20万台以上と言われている。
損害車買い取り専門業者「fa-arrow-circle-rightTAU(タウ)」には、多くの電話が寄せられていた。
TAUでは年間約10万台の車が取り扱われており、ここ数年で水害による事故車の買い取りが多くなっている。
水没者の買い取りにおいて最も大切なのは「エンジン」で、そのまま問題なく使えるのかどうかが重要だ。
今回の台風により水没した車を査定した人は他社では0円だと言われた車も、TAUだと35万円の買い取り価格に。
TAUが買い取った車はどうなる?水没車の行き先とは?
個人だけでなく損保会社などからTAUが買い取った車は全国49か所の専用スペースに集められる。
水害が起きてから、通常の3倍ほどの引き取り件数になった。
引き取った車はまず高圧洗浄機で洗浄し、綺麗な状態にする。
洗浄した車は自社の販売サイトでオークション形式で販売。
TAUは世界119の国や地域と取引しており、その車の最大の輸出先はロシアだ。
買い取った会社は3週間近くかけて修理を行い、エンジンもかかる状態に。
直した車は「グリーンコーナー」と呼ばれる日本の水害車・故障車を販売している場所へと運ばれる。
ここで販売される輸入中古車の98.8%が日本車というのだから驚きだ。(2017年ロシア極東税関 通関統計)
関税なども含めて2016年式のトヨタ・カローラは約130万円になるという。
自信や台風などの災害が多い日本。
このような企業の取り組みにより、水害により助かる命が増えるはずだ。