
2019年6月27(木)22:00〜はカンブリア宮殿。
現場で働く人にスポットをあてた、本番組は経済ドキュメンタリーとなっております。
大人から子どもまで、日本人の99.7%が飲んだことのあると言われるカルピス。
今年で100周年を迎えたカルピスは、過去最高の売り上げを更新している。
なぜ、ここまで異例のロングヒットを続けているのか。
今夜はカルピスの知られざる秘密に迫る。
夢を抱かせ叶えてあげる。子どもだけでなく大人の夢も
100周年イベントとして今年、大阪のデパートでは、蛇口からカルピスが出てくる仕掛けが用意された。
その夢のようなイベントに多くの大人が子どもを連れてきた。
小学生以下はなんとタダでこのイベントに参加できる。
こうして子どもたちのハートを掴むことで、また後世のカルピスファンが誕生するのだ。
大人の夢にもカルピスは焦点を当てている。
昔、今の大人が小学生くらいの頃、かつてカルピスは贅沢品の一種だった。
原液を薄めて飲むのが主流だが、原液を多めに濃くして飲むとよく怒られたものだ。
多くのかつての子どもは、濃厚なカルピスを夢想していたに違いない。
そこで2016年に誕生したのが「濃いめのカルピス」だ。
乳成分を2倍含んだこの商品は、200億円を売り上げる大ヒットとなった。
まさに今の大人の、子どもの頃の夢を叶えてあげたのだ。
実際にファンは中高年層が多く、カルピスの狙いは果たして的中した。
健康商品としてのブランディングの成功
続いて2017年には、機能性表示飲料のカラダカルピスを発売。
こちらも125億円を売り上げるヒットを記録した。
脂質代謝を活性化させる乳酸菌を配合し、体脂肪を減らせることをアピールしたのが
勝因だ。
そもそも、カルピスは100年前の発売当初からキャッチコピーは美味整腸。
美味しくて整腸効果があり、体にいいことが国民にとって魅力的だった。
困難に耐え、ロングセラーを守ったのは社長の前向きに考える心の在り方
そんなカルピスという大ヒット商品を作るアサヒ飲料の現トップは岸上克彦。
異例の経歴をもったカルピス一筋の男だ。
岸上は、カルピスが一つの会社だった頃の1976年に入社した。
カルピスウォーターなどの大ヒットの立役者として活躍していたのだ。
しかし、会社はその後、2007年に味の素に買収され、2012年にはアサヒ飲料に買収されてしまう。
普通の人間であれば腐ってしまいそうなときも岸上は、その状況をポジティブに捉えていた。
味の素の傘下に入れば、グローバルにカルピスブランドを発展させていくチャンス、
アサヒ飲料に入れば、大きな規模で自分の実現したいことができると考えた。
子会社化には、もちろん少なからずネガティブなイメージもあったが、そこでネガティブに溺れるか、どうやって価値を生み出すかと前向きに考えるかで変わってくると信じ、自分を奮い立たせたそうだ。
そして、岸上は、アサヒ飲料に買収されてから3年後に異例の出世を遂げ社長を任された。
創業者 三島海雲の世のため人のためにという想いから始まったカルピスの歴史
元々、雑貨商を営んでいた三島海雲は1908年内モンゴルへ向かった。
仕事で疲れ切っていた三島は現地の人に元気が出るからと言われ家畜の乳を発酵させた酸乳という飲み物を振舞ってもらった。
独特の酸味で味こそすごく美味しいわけではなかったが、何日か飲んでいるうちにすごく元気が出た。
そしてこれは日本に広める価値があると思った。
日本に帰ってからは乳酸菌の研究に没頭した。
成果が実り、1919年にカルピスは発売された。
茶色いビンに入った初代カルピスのラベルには美味整腸と書かれていた。
それに加えて甘酸っぱさを初恋の味と形容し、日本人の心を掴んだ。
大ヒットから赤字の危機に転落。それでも日本人はカルピスを求めていた。
発売されてからヒットを飛ばし、1959年には初のテレビCMを放送。
お中元にはカルピスというイメージを作り、大当たり。
お中元の定番商品となり、デパートには特設コーナーができるほどになった。
しかし、大人気になったカルピスだったが1980年代、自動販売機が普及すると一気に風向きが変わった。
簡単に飲める缶飲料と比べ、作るのに手間の掛かるカルピスからは徐々に消費者は離れていってしまった。
ついには1989年には赤字転落するほどであった。
そこで時代に対応する新商品としてカルピスウォーターが開発された。
事業マネージャーもそこまで売れるとは思っていなかったというほどで、
見込みのなんと5倍を売り上げたのだ。
やはり、消費者は心のどこかでカルピスを求めていたのであろう。
カルピスのブランド力の秘訣とは
ここまで根強い人気のカルピスのそのブランド力はどこから来ているのだろうか。
社長は、発売当時からの
- 美味しい
- 健康
- 安全
- 経済的
ということを理解して頂いていて、甘酸っぱさが情緒的な価値を生み出していると考えている。
おそらく創業者の私利私欲ではなく、人のために健康のためにという想いが脈々と受け継がれているのであろう。
カルピスの人気はまだまだ終わりそうにない。