11月28日(木)放送の「カンブリア宮殿」は、仏教寺院をビジネス視点で改革し、参拝客が倍増した僧侶が登場。
その成功で経済界だけでなく、元銀行マンをいう異色さで注目の的となっている。
二足の草鞋を履く僧侶による「時代に合わせた寺改革」の全貌に迫る。
年々増加している「墓じまい」と「合同墓」とは?
誰もが避けては通れない「お墓問題」。
ある日、最近人気の「ある墓」についての説明会が東京で開かれていた。
僧侶が話していたのは、「墓じまい」と「合同墓」について。
次の代、孫の代になった際に遠方までお墓参りしてもらうのは忍びないと思う人が増えている。
合同墓とは、家族単位のお墓ではなく、血縁のない遺骨も一緒に納める墓だ。
お墓が遠すぎると感じる人や墓守をする人がいないという問題が増え、東京・築地本願寺の境内にある「合同墓」について問い合わせが殺到している。
fa-arrow-circle-right築地本願寺では、"開かれた寺"を目指して驚きの大改革を行っているという。
遺骨は二重の袋に入れるので他の人の遺骨と混ざる心配はない。
「予約殺到!7000人超」東京・築地にある“築地本願寺”に墓が持てる!?
築地本願寺は400年の歴史を持つ、浄土真宗の寺。
日本では珍しい古代インド仏教様式で、2014年には国の重要文化財にも指定された。
そんな場所が2年前から始めた合同墓は、なんと過去の宗教宗派は問わず30万円から墓を持つことができるのだ。
築地本願寺の「合同墓」の特徴は次の3つ。
「合同墓」の特徴
- 過去の宗教・宗派は問わない
- 礼拝堂の回廊に名前が刻まれる
- 東京メトロ・築地駅に直結している
- 年間管理費用は無料で、法要は毎日行われる
- 30万円から合同墓への遺骨の預かりが可能
この合同墓のシステムに興味を持つ人は多く、その予約件数は既に7000人を超えている。
「金額が安い」「子供たちも集まりやすい」「築地本願寺だったら安心」という声が多かった。
参拝者は250万人!“若者離れ”から脱却すべく、時代に合わせた「新しい墓作り」とは?
築地本願寺にあるインフォメーションセンターには長蛇の列が。
その先にあったのは、「fa-arrow-circle-right築地本願寺カフェ Tsumugi」。
目当ては朝限定の18品が楽しめる「18品の朝ごはん」、1980円。
精進料理をイメージした揚げ茄子大豆そぼろや、つきぢ松露の卵焼きなどメニュー数が多く、色合い豊かな朝食セットは“インスタ映え”で話題となった。
若者離れしている「墓地」を時代に合わせるために、境内に参拝後に訪れることができるカフェをオープンしたのだ。
そのほかパフェやケーキなどのスイーツも用意している。
昔は墓にカフェがあるということは考えられなかったが、墓は時代の流れに合わせて共に変わりつつある。
また、築地本願寺オフィシャルシィップには900アイテムの雑貨が販売されており、土産屋やブックセンターもある。
お土産で人気なのは仏壇に飾ることができ、綺麗な音色を奏でる「まわりん 葉」9900円だ。
参拝者が250万人と倍増!寺のイメージを覆す「大改革」
築地本願寺はこのような取り組みを行うことで、家族連れや若い女性などの今まで寺に訪れることのなかった客層をゲットし、参拝者は昨年の倍の250万人と倍増した。
寺のイメージを覆す「大改革」をスタートさせたのは元銀行マンの僧侶・安永さん。
安永さんは「お葬式もお墓もいずれはなくなる」ということを危惧していた。
そのため、葬式などに寄りかかって生きようとすると寺は経営できなくなってしまう。
実際に、2040年には7万7000ある寺の約3割が消滅する可能性があると言われている。(※國学院大学:石井研士教授)
安永さんは、「企業も寺院も古いビジネスモデルでは生き残れない!」と寺の改革を問題視し続け、2015年に安永さんは築地本願寺の宗務長に就任。
そこで安永さんが寺に取り入れたのが一般企業では当たり前の「顧客主義」だ。
寺も企業と同じく、客がいなければ生き残っていけないということを唱えた。
「現代版の駆け込み寺」時代に合わせた“新しい寺”
安永さんは築地本願寺の外でも、東京・銀座に「fa-arrow-circle-right築地本願寺銀座サロン」をオープン。
「心と体を豊かに」をコンセプトに、カルチャーセンターとして話題の終活セミナーや太極拳・ヨガの講座も開催している。
また、お坊さんが来訪者の悩みや相談を聞いてくれる「よろず僧談」も人気。
受講料は“無料~1000円”とリーズナブルな価格設定となっている。
築地本願寺銀座サロンは昔ながらの葬式やお墓の相談だけでなく、恋愛や人間関係、パワハラなど、現代ならではの悩みを聞いてくれる、いわば「現代版の駆け込み寺」なのだ。
安永さんは「宗教法人も株式会社と同じコーポレーション。株式会社は利益を株主に配当する役割があるが、我々には株主はいないので、それを公共にかえせばいい」と言う。
これが、安永さんの考える“時代に合わせた新たな寺の役割”だ。
元銀行マンの挑戦 生き残りをかけた築地本願寺、経営大改革!
ある日、報恩講が開かれており、中心となるのは宗務長である安永さんだ。
報恩講とは
安永さんはもともと大手銀行マンとして勤めており、順風満帆の生活を送っていた。
そんな安永さんが僧侶になったのは50歳の時で、これは他の僧侶と比べると圧倒的に遅かった。
なぜ安永さんは銀行マンから僧侶になったのだろうか。
銀行マンとして勤務していた安永さんはだが、1990年代にバブルが崩壊して以来、経営は悪化。
安永さんは「このままではダメだ」と銀行マンの職に見切りをつけて、コンサルタントの道へ進んだ。
安永さんが47歳の頃、ふと目にした新聞広告で“5万円で受けられるお坊さん養成の通信教育”と出会い、僧籍を取得。
やがてビジネスマンと僧侶として二足のわらじを履くことになった。
当時、業績が右肩下がりであったについて、安永さんは僧侶たちに寺の現状分析やマーケティングの必要性を教え、大胆な意識改革に取り組んでいた。
しかし、古参の僧侶たちは「寺は金儲けをする場所ではない」と猛反発。
そこで安永さんは自らプロジェクトチームを作り、改革を唱え続けた。
そんな安永さんに目を付けたのは、浄土真宗本願寺派のトップの石上総長。
石上さんは伝統や基本は胎児だが、「我々はどうしても伝統や基本に縛られてしまう。それにより一般の方とのギャップができてしまう」と言う。
安永さんは世の中のことや受けて目線の大切さを身に付けていたというのだ。
少子高齢化による「檀家制度(だんかせいど)」の崩壊と僧侶の派遣サービス
千葉県・南房総市にある瑞岩寺。
350年続く寺だが、過疎化により生活できず、お寺が大変なことになっている。
寺は長年、檀家制度という地域の住民と結びつきを持っており、それによりお布施や寄付金で安定した運営をしていた。
しかし、近年は少子高齢化や核家族化が進み、檀家制度は崩壊。
檀家制度(だんかせいど)とは
江戸の寺請制度が始まりと言われている。
本願寺派の属する寺の約半分は、年間の収入が300万円以下となり、寺の修繕さえできないほど。
寺にいてもやることがなく、生活が厳しいということがあり、瑞岩寺では「お坊さん便」というサービスを利用することになった。
お坊さん便とは大手葬儀会社である「fa-arrow-circle-rightよりそう」が2013年5月より行っている希望する条件にあった僧侶を法要にあげてもらう僧侶派遣サービスだ。
このサービスを利用して経営を行っている寺も少なくないと言う。
築地本願寺の意外と知らされいない利用方法とは?
実は、築地本願寺では、あまり知られていないサービスがある。
第一伝道会館では、宗派は関係なく誰でも泊まれる宿泊サービスを行っているのだ。
お値段は2名1室で1万円と1人5,000円なので、都内のビジネスホテルと比べても格安。
さらに本堂では和装・洋装・宗派を問わずに結婚式を執り行うこともでき、僧侶たちも雅楽で祝福してくれる。
時代と共に変わっていくものは多いが、古くから続く寺でさえ、すでに変わりつつある。
異色の業種に飛び込んだ安永さんは、これまでの常識を破る形で改革を進めてきた。
もちろん昔ながらの伝統を大切にすることも良いが、ユーザーに合わせて「新しい取り組み」を進めていくことも大切なのかもしれない。