今週1月30日の「カンブリア宮殿」では、高級チョコで名高い「ゴディバ」に密着。
日本法人である「ゴディバジャパン株式会社」は、社長のジェローム・シュシャン氏の経営術により、売り上げを3倍に伸ばしているという。
弓道の精神を経営に当てはめる、シュシャン氏のビジネス論とは一体どのようなものなのだろうか。
売り上げが3倍!「ゴディバジャパン株式会社」とは?
fa-arrow-circle-rightゴディバジャパンとは、1994年に設立したベルギー王室御用達のチョコレート「ゴディバ」の日本法人企業で、日本では297店舗を展開している。
高級チョコレートとして人気の高いゴディバは、バレンタインシーズンだけでなく、さまざまな場所で目にすることができる。
ゴディバが日本で販売を開始したのは、1972年。
「一粒400円は当たり前」というゴディバのチョコレートは、海外チョコレートのパイオニアとして人気を集めている。
しかし、"高級感"を売りにしていたゴディバが、"親しみやすさ"を打ち出して、そのイメージを一変させている。
そのキーマンとなり、次々と新しいアイデアを輩出しているのが、2010年にゴディバジャパンの社長に就任した「ジェローム・シュシャン氏」だ。
“チョコレートドリンク”として販売されるゴディバの「ショコリキサー」
ショッピングモールでは、「ゴディバ」はチョコレートドリンクの「ショコリキサー」として販売されている。
「ショコリキサー」は全国166店舗のゴディバで販売されており、今年の3月31日まで数量限定で販売されている「ミルクチョコレートヘーゼルナッツプラリネ」や「ミルクチョコレート31%」などが人気だ。
チョコレートドリンクだけでなく、2種類のダークチョコをコクのあるミルクでブレンドしたソフトクリーム「ダブルチョコレート」も次々と売れている。
ゴディバの商品を購入した客たちは口をそろえて「食べたら満足感が違う」と言う。
また、“親しみやすさ”としてコンビニで手軽に買える「コンビニ専用商品」も販売されている。
1粒400円と言う高価格ではなく、5個入りで350円のリーズナブルな価格のチョコレートや、コンビニ×ゴディバがコラボしたドリンクも人気だ。
コンビニ限定のゴディバを手に取る客は「ゴディバのお店には入りずらいけど、コンビニにおいてあれば買いやすい」と話す。
そんなゴディバジャパンの2019年の売り上げは過去最高の436億円となることが予想されている。
この売り上げは2010年と比較するとなんと“3倍以上”という快進撃なのだ。
日本独自の商品開発で売り上げ世界一は「日本」に!その売り上げの秘密は?
ゴディバジャパンの快進撃の秘密を探るため、番組の取材班は「ゴディバ」創業の地であるベルギーを訪れた。
実はゴディバは、歴史に名高い“伝統の味”を守るため、世界中で販売するチョコレートをベルギーの工場で一貫生産して、輸出している。
その生産量はなんと1日8トン。
味を守るためにベルギーで一貫生産している一方で、ゴディバは日本独自の商品開発にも力を入れていた。
実は、ゴディバの商品が世界一売れているのは「日本」なのだ。
どうして日本での売り上げが伸びたのかというと、第一に日本独自の商品開発を行ったことが挙げられる。
日本ならではのアイデアとして、ベルギーから直送されるチョコと日本の伝統食材の「きな粉」や「ほうじ茶」、「抹茶」などをコラボして商品化するという。
商品開発の担当を任されチエルのは日本在住のフランス人。
なんと彼は、世界にたった5人しかいないゴディバの「ショコラティエ」のひとり。
彼は、日本で爆発的に人気のチョコレートドリンク「ショコリキサー」やソフトクリームも開発し、ゴディバの看板商品にした人物なのだ。
売り上げの秘密の2つ目は"高級感"と"親しみやすさ"という、一見正反対のコンセプトを融合させたこと。
コンビニスイーツとしての販売が、これまでと違った層を取り入れることができ、全国4万店舗で販売している。
今年も1月29日から、数量限定でローソンとゴディバのコラボ商品として「ショコラロールケーキ(395円)」が販売される。
実はスゴい!ゴディバジャパンの代表「ジェローム・シュシャン氏」
ジェローム・シュシャン氏は、フランスの名門である「HCE Paris経営大学院」をトップクラスで卒業。
さまざまな一流企業でキャリアを積んだ。
日本に来る前には、スペインの一流企業で磁器人形を手掛ける「リアドロ」の日本支社で社長を務めていた。
当時ヒット商品を販売し、ゴディバジャパンにヘッドハンティングされたのだ。
店舗ごとの売り上げをチェックしていたところ、シュシャン氏はあることに危機感を覚えたという。
店舗ごとの売り上げが3年連続減少しており、来客数も減り続けていた。
そのビジネス理論のルーツは、シュシャン氏の持つ「信念」と「ニッポン古来の弓道の教え」にあるという。
"正射必中"-フランス人弓道家が唱える古くて新しいビジネス論
実は、シュシャン氏は約30年前からの弓道家で、“弓道5段”、“錬士”の称号を持つ凄腕だ。
毎朝、気持ちを整えるために2~10本の弓を射ち、出勤しているほど。
そんなシュシャン氏がビジネスで重んじているのはニッポンの弓道の教え。
例えば、弓道の教えには、正しい射を行えば必ず当たるという「正射必中」という言葉がある。
シュシャン氏はそれをビジネスを的に例えると、「売上や利益などの目標に気を取られると上手くいかない。お客様のことを考えてマーケティングを行い、良い商品を作れば結果は必ずついてくる」というのだ。
つまり、的(売り上げ)を狙うのではなく、お客様のために正しく戦略をして「正しく射られた矢は必ず的に当たる」という考えを持っているのだ。
他にも「正射正中」「一射一射」など、弓道精神をビジネスに応用している。
コンビニスイーツに乗り出したのも、「夜の10時にゴディバのアイスクリームが食べたい」と思っても百貨店が閉まっている。
しかし、ゴディバののアイスクリームがコンビニで販売していれば、いつでも食べてもらうことができる、だから販売したいというアイデアが結果的に百貨店や会社全体の売り上げアップに繋がったという。
さらに入りにくいお店というイメージを払拭するために店舗を白基調の明るい雰囲気に変更し、店内の清掃も徹底した。
秋にはニューヨーク生まれの「ゴディバ・カフェ」をオープン予定!
“高級感”と“親しみやすさ”で9年で売り上げが3倍に伸びたゴディバジャパンだが、秋にはまた新しい「ゴディバ・カフェ」をオープンする予定だという。
昨年4月にニューヨークにオープンしたゴディバカフェが、今秋に日本にもやってくる。
シュシャン氏は日本に在住して30年のフランス人経営者。
人気メニューのクロワッサンをワッフルメーカーでプレスした中からチョコレートが溢れ出る「クロッフル」。
さらに、日本ではすでに販売されているソフトクリームも名物メニューとして販売されている。
こうして、日本から誕生したメニューや、世界に5人のショコラティエが新たに考案したメニューも登場する予定だ。
シュシャン氏が大切に思っているのは「売る」ではなく「売れる」姿勢を持つこと。
購入したチョコレート容器を小物入れにするという人が多いという声から、容器にこだわった自分へのご褒美がコンセプトのチョコレートを販売するなど、「売れる」姿勢を大切にしている。
的を狙いすぎると当たらないというシュシャン氏は、そういった時に邪魔するものは「我」だという。
つまり、ビジネスに当てはめると「お客様の声を聞く時は、自分を忘れなければいけない。」ということ。
こういった気持ちが成功へを繋がる第一歩なのかもしれない。